Arita
2025 Collection

およそ 400 年前、九州・肥前の地で日本における磁器製造がスタートしました。その伝統を受け継ぐ有田焼の窯元と共に製作した白磁の照明のコレクションです。磁器は白色度が高く、透光性を持つことが特徴です。陶器には光を通す性質はありません。焼き物の素地の中では唯一、磁器だけが光をやわらかく透過させます。

生地の成形には、陶磁器の成形方法の一つとして古くから行われてきた排泥鋳込の技法を用いています。泥漿と呼ばれる水などで緩めた粘土を乾いた石膏型に注ぎ入れ、口いっぱいまで満たすと、石膏が泥漿の水分を吸収して型に接する部分から徐々に固まり始めます。時間が経つにつれ厚みが増し、わずか数分の違いが仕上がりを左右するため、慎重に時間を測りながら成形を行います。理想的な厚みになった時点で内側に残った泥漿を流し出し、しっかりと固まったら型から外して口元を整え、生地が完成します。

焼成の過程では 15%近くもの収縮が生じるため、生地は完成寸法よりも一回り大きく成形します。このコレクションの中でも特に大きなサイズのものでは、石膏型に泥漿を流し込むと総重量が 100kg を超え、鋳込みも排泥の作業も二人がかりで行う大仕事となります。さらに、乾燥や焼成の工程ではわずかな条件の違いで歪みや割れが生じるため、ひとつひとつの作業を細心の注意を払って進めています。普段は食器類を主に生産している窯元にとっても、型作りでこれほどの大きさの品物を製作することは新たな挑戦でした。泥漿の調整から鋳込みの時間、生地の厚み、焼成温度や収縮のコントロールに至るまで、あらゆる要素を見極めながら試行錯誤を重ねたことで、このコレクションが実現しました。

釉薬を施さず、白磁のマットな素地の質感をそのまま生かした仕上げとしています。型で成形されたシャープな面が織りなす幾何学的な造形は焼成の過程を経ることでわずかにやわらぎ、整然とした中にも穏やかさを感じさせます。消灯時には彫刻のような端正な佇まいを見せる一方、光を灯すと泥漿の流れによって生じた揺らぎが面に現れ、温かな色調と共に有機的な表情を浮かび上がらせます。

Materials

磁器
無釉