andon – 032

andon – 032

行燈は江戸時代から日本人の生活に根付き、日常生活のあかりとして欠かすことのできないものでした。和紙 越しに蝋 燭の柔らかいあかりが灯る、日本人の生活のあかりを現代の空間にもう一度取り戻したいと考えました。伝統のあるものを現代のものに置き換えることほど難しいことはありません。形式やしきたり、基本的な作りや素材などの伝統というルールがあり、そのルールを逸脱せずに、現代に合う新しいものを作るには、伝統や作り、素材をしっかりと守る必要があります。

日本には美しい灯火具が数多くありました。中には驚くほどモダンな意匠のものもあり、日本人の粋をこの生活道具の歴史から知ることができます。私たちは全 14 型の andon を作りました。あかりを灯すものとしてだけでなく、影を作り、気配を作る生活の道具に美意識を注いだ日本人の「遊び」の心を手本にしました。

昔ながらの伝統的なフォルムもあれば、行燈を再解釈して新たに形づくったフォルムもあります。フレームは極限まで細くし、現代の空間の中で杉材の繊細な線と手漉き和紙が重なることで、どのような生活空間にも自然に佇む姿にしました。

室内に詩的な陰翳をもたらす柔らかなあかりを作り出すために、伝統の本質に根差した手漉きの美濃和紙を使いました。この和紙の原材料の中でも最高級の那須楮 (なすこうぞ) を使い、多くの工程を経て、丁寧に作られた和紙です。

現代の行燈のもう一つの素材として、木材を使用しました。昔の行燈と同じように、杉の無垢材を指物師が金具や石油系接着剤を使わずに、全工程を手作業で行うことで、行燈に現代へ受け継ぐ息吹が宿りました。この指物師の仕事は現代の効率優先のものづくりとは逆行した手間を掛けたものですが、だからこそ尊い価値を生み出しました。行燈のあかりが、懐古的な趣ではなく、その空間に新鮮な現代の日本の空気が漂うことを期待しています。