Pillars of Memory

かつての日本において、建築や道具といった生活の基盤は、地域の風土に根ざした自然素材と職人の手技によって支えられてきました。先人たちは未来の世代の資材を確保するため、計画的に植林を行い、百年単位の時間をかけて森を育む共生のサイクルを維持してきました。しかし、この百年の間に社会は工業化へと転換し、金属や樹脂といった大量生産品が主流となりました。これに伴い、伝統的な木造建築や手仕事の場は縮小し、かつて未来のために植えられた杉や欅の大径木が、その価値を十分に発揮できる舞台は失われつつあります。 
 
本作品は、行き場を失いかけている樹齢の長い大径木に、伝統的な古典建築の「刻み」や「継手」といった精緻な加工を施した柱材のオブジェ作品です。木肌に刻まれたホゾ穴や継ぎの意匠は、単なる造形表現に留まりません。それは、長い年月をかけて木を育て上げた先人たちの意志に対する敬意の表明であり、自然素材を高度に扱う職人文化へのオマージュです。 
大径木が持つ圧倒的な存在感を通じて、現代社会における資源の在り方の新しい試み、そして先人から受け継いだ精神性の再考を試みています。 

Materials


木地

木地