柱と継ぎ手 – 日本の自然と伝統を受け継ぐ象徴

会期

2025年10月31日(金)- 11月23日(日)

11 : 00 – 19 : 00 (水曜定休)

DESIGNART TOKYO 2025

10月31日(金) – 11月9日(日)

会場

Time & Style Atmosphere

東京都港区南青山4-27-15

日本の国土の約七割は森林に覆われていると言われています。
そのうち、欅・ブナ・楢などの広葉樹による天然更新林が約五〇%、そして先人によって植林された杉や檜などの針葉樹による 人工林が約五〇%を占めています。
日本は南北三千キロに及ぶ細長い島国であり、険しく深い森林に覆われた山々と、あらゆる方向から潮流が流れ込む海に囲まれ ています。こうした海と山林が織りなす豊かな生態系の中で、数多くの動植物が長い年月をかけて育まれてきました。南北に長 い日本列島の多様な環境の中で、それぞれの地域に特有の動植物が進化し、人と森、木々、動物たちとの密接な関係が形成され てきたのです。
日本古来の信仰である神道は、二千五百年以上にわたり自然を敬う精神として受け継がれ、人々の生活や慣習の中に深く根付い てきました。木造家屋や木製の道具などに木材を用い、また山の恵みである木の実や動植物を食としていただくなど、日本人は 自然の恵みの中に豊かさを見いだしてきました。
約一五〇〇年前からは、中国や朝鮮半島をはじめとする近隣諸国から多くの文化や技術が伝えられました。日本固有の神道と、 中国から伝来した仏教という二つの思想と文化が、島国という地理的特性の中で長い時間をかけて融合し、日本人独自の宗教観 や伝統、技術、そして美意識を形成していったのです。
日本人の生活は、古来より自然との深い関わりの中で営まれてきました。地震や台風など自然災害の多い国土において、人々は 自然の力を畏れ敬いながらも、生活を支える山や海の恵みに感謝し、共に生きるという考え方を大切にしてきました。こうした 背景のもと、日本人は森林と共に生きる生活の基盤を築き、神社仏閣や民家の建築材として杉や檜を用いながら、伐った木を再 び植えるという、次世代を見据えた循環型の暮らしの知恵を育んできました。
一方で、ブナや楢、欅といった広葉樹による自然更新林は、南北に連なる日本の山地に豊かな生態系をつくり、多くの動物たち の棲みかであり、食料の供給源としても、日本の自然を支えてきました。広葉樹の豊かな森と、先人の知恵によって育まれた針 葉樹の森が共存し、今日でも日本の国土の大部分を覆っていることは、世界でも稀に見る豊かな森林資源を有している証といえ ます。
しかし、戦後の急速な工業化の進展により、多くの建築物や住宅がコンクリートや金属などの工業製品で造られるようになり、 木材の需要が減少しました。その結果、山林資源を生業とする林業は衰退し、間伐や枝打ち、下草刈りなどの山林の維持管理が 行われなくなりました。こうした手入れの不足によって、光が届かず健全な成長を遂げることができない森が増え、先人たちが 守ってきた山々はその本来の姿と機能を失いつつあります。
さらに近年では、バイオマス発電の燃料として広葉樹や針葉樹が大規模に伐採され、全国各地に発電施設が建設されたことによ り、貴重な森林資源が急速に失われつつあります。
こうした現状の中で、伐採適齢期を迎えながらも使われることのなかった日本の豊かな木材を正しく活用し、その価値を再定義 することが急務です。持続可能な形で森林資源を循環させることで、経済活動が森の中で健全に続き、日本の美しい広葉樹と針 葉樹の森林が再び豊かさを取り戻すことができるのです。
私たちは、森林や自然資源への意識を変革し、山や里山、森林から生まれる自然の恵みを、現代の日本人の暮らしと精神文化の 基盤として再び位置づける必要があります。こうした思いから、私たちは日本の森林で長い年月をかけて育まれた針葉樹の杉の大径 木と、広葉樹の欅の大径木を素材として、五十年、百年という時間と人々の愛情が刻まれた木の力強さと重みを感じていただけ る作品を制作しました。
その柱材には、古典建築で用いられてきた木材の継ぎ手の技法を施し、先人たちが築き上げた木の文化と現代を「つなぐ」象徴 として表現しています。 


Time & Style Atmosphere

107-0062 東京都港区南青山4-27-15
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営業時間 : 11:00 – 19:00 (水曜定休)