Azmaya & Osamu Saruyama
Japanese Tools, Craft and Design Exhibition

時間を超えて残るもの
東屋の熊田剛祐さん、そして猿山修さんと話をしていると、私たちが日々ものをつくる中で考えていることと、深いところでつながっていることを感じます。それは、日本的なものをつくるということでも、伝統工芸を保存するということでもありません。私たちが共通して見つめているのは、もっと根源的なことです。なぜ、ものをつくるのか。なぜ、それを使うのか。そして、つくられたものが人間の暮らしの中で、どのように時間を重ねていくのか。
熊田さんは「素材に嘘をつかない」と言います。木は木として、鉄は鉄として、陶土は陶土として、それぞれの素材が本来持っている性質を受け入れる。使いやすさや効率のために、その性質を覆い隠すのではなく、傷つくことも、錆びることも、色が変わることも含めて、その素材と付き合っていく。そこには、人間が自然を完全に支配しようとするのではなく、自然の側に少し歩み寄って暮らすという、日本に古くから存在してきた感覚があります。そして私は、デザイナーの猿山さんの仕事にも同じものを感じます。猿山さんが生み出すものには、強く自分自身を主張するような造形がほとんどありません。静かで、抑制されていて、一見すると、昔からそこに存在していたようにも見える。しかし、よく見ると、寸法や輪郭、厚み、手触りといった細部に、非常に繊細な判断が積み重ねられています。新しい形を発明することよりも、長い時間の中で人間が使い続けてきた形を見つめ、その中から余分なものを取り除き、現代の暮らしにもう一度置き直す。そこには「デザインした」という痕跡さえ残さないような、静かなデザインのあり方があります。
熊田さんは、自分たちがつくったものが「1000年前につくられたものと同じ食卓に置かれても違和感がないこと」を大切にしていると言います。そして、100年、200年後に骨董店に並んでいる姿を想像しながらものをつくる。私はこの考え方がとても好きです。現代のものづくりは、常に新しいものを生み出し、それを短い時間の中で消費し、また次の新しいものへと置き換えていくことを求められます。しかし、本当に新しいものとは何なのでしょうか。100年前のものと今日つくられたものが自然に同居し、さらに100年後にも誰かがそれを手に取り、使い続けることができる。そのようなものを生み出すことの方が、はるかに現代的なのではないかと私は思います。東屋のものづくりは、一人のデザイナーの表現によって成立しているものではありません。素材をつくる人がいて、職人がいて、熊田さんがいて、猿山さんのような人がいて、それぞれの経験や知識が重なり合い、一つのものになっていく。熊田さんはそれを「オーケストラ」と表現しています。誰か一人の声を大きくするのではなく、それぞれの音が互いを消すことなく、一つの調和をつくる。私はそこに、日本のものづくりの非常に大切な特徴があると思っています。日本には、名前を知られることなく、何世代にもわたって一つの素材、一つの技術、一つの道具と向き合い続けてきた人たちがいます。その技術は、美術館に保存するだけでは生き続けることができません。使われなければならない。注文されなければならない。そして職人が、その仕事によって生活できなければならない。だから熊田さんにとって、ものを売ることと文化を守ることは別々のことではありません。利益は目的ではなく、文化を次の世代へ渡していくための手段である。この考え方は、Time & Styleが日本でものづくりを続けてきた理由とも深く重なります。
私たちが今回、ミラノとアムステルダムで東屋と猿山修さんの仕事を紹介したいと思ったのは、日本の美しい日用品をヨーロッパに紹介したいからだけではありません。その背景にある、一つの問いを共有したいからです。私たちは何を未来に残したいか。ものは、人間より長く生きることがあります。誰かが毎日使った器が、その人がいなくなったあとも残り、別の誰かの生活の中で再び使われる。そこには、つくった人、使った人、そしてそれを受け継いだ人の時間が静かに積み重なっていきます。熊田さんと猿山さんがつくるものには、その時間を受け入れる余白があります。新品である瞬間が完成なのではなく、使われ、傷つき、色が変わり、人の記憶を受け入れながら、少しずつ完成していく。だからこそ、彼らのものは静かなのだと思います。大きな声で自分の存在を主張する必要がない。ただそこにあり、人の暮らしを支え、時間とともに美しくなっていく。今回の展覧会を通して、私たちはそのような日本のものづくりの姿を、ミラノとアムステルダムで伝えたいと思います。そして300年後、私たちの名前が忘れられたとしても、ここにあるもののいくつかが、世界のどこかで誰かの日常の中に残っていたなら。それは、ものをつくる人間にとって、とても幸福なことなのではないでしょうか。
吉田 龍太郎 (Time & Style)
15 Oct – 6 Nov 2026
Time & Style Milan
Opening Event
Thu, 15 Oct
17:00 – Japanese Tea & Cocktail
Closing Event
Thu, 5 Nov
17:00 – Japanese Tea & Cocktail
19:00 – Roundtable Talk
> Takehiro Kumata (Azmaya)
> Osamu Saruyama
> Ryutaro Yoshida (Time & Style)
14 Nov – 30 Dec 2026
Time & Style Amsterdam
Opening Event
Sat, 14 Nov
16:00 – Japanese Tea & Cocktail
16:30 – Roundtable Talk
> Takehiro Kumata (Azmaya)
> Osamu Saruyama
> Ryutaro Yoshida (Time & Style)