Zepher chair

この椅子の原型は、今から10年前の2006年に製作しました。背柱から後脚が内側と外側に向かってジグザクに折れ曲がる特徴的な背中のラインは、これまでになかった斬新なデザインの在り方でした。一般的に椅子をデザインする際、背柱と後脚を1枚の無垢材から切り出すので、材料の軽減やコストダウンのために、出来るだけ小さな親板(脚を切り出すための無垢板)から取れるような形状を考えます。この椅子は、一見すると大きな材料を必要とする形状に見えるのですが、見た目の印象とは異なり、効率的な要素を見つけることができました。不可能だと思われていた新しい在り方を、工場の人々と一緒になって考え、生み出した椅子でもあります。

2006年に誕生してから5年後の2011年、フレームの角を面取りして柔らかな削りを施すマイナーチェンジを加えました。ジグザグの形状と鋭角なラインを持つそれまでの椅子は印象の新しさはありましたが、椅子全体の一体感に欠けていました。そこで、背柱と後脚のエッジを緩やかなアール形状に削ることで、背中に1本のきれいなラインが生まれ、椅子の印象を大きく変えました。そこがターニングポイントとなり、Zepher chairは当社のアームチェアの中では最も多く製作される製品となりました。

この椅子の製作にあたっては後脚と背柱だけでなく、他にも幾つかの難しい要素があります。背板の無垢板を曲げ、それぞれの部材が自然な流れで繋がるように、背板と背柱を接合してから背板上部の小口や背柱にもアール形状を施すように削りました。また、座枠は内側に向かって緩やかに曲面形状に削り、座面の強度を保ちながら、座面が薄く見えるようにしています。それぞれの部材の接合面を滑らかに繋ぐために「突き付け」という精度が求められる接合方法を採用し、これによって椅子全体に切れ目のない一体感が生まれました。一般的に、部材の接合面には目地を設けて、木材の伸縮によって亀裂が発生しても目立たないような処理しますが、「突き付け」によって全体の意匠性と一体感を優先させています。

この椅子で最も大切にしたのは手触り感です。人の肌が触れる部分や手を載せる部分、椅子に座る時や移動させる時に触る部分の触感を大切にして、緩やかで肌触りの良い触感を得られるように、製作しながら細部を手で触れ確認しながら仕上げています。毎日使用する度に、気持ちの良い肌触りを感じ、快適に使っていただける、当社を代表する椅子のひとつとなりました。

品番: l−032
サイズ: W574×D542×H795×SH455×AH600
フレーム
座:ファブリック張り(F) / レザー張り(L)