Valle

椅子がデザインされる時、ほとんどの場合は前脚のある方向を椅子の正面と考えます。多くの書籍に掲載されている椅子もそのほとんどが正面もしくは斜め前から捉えた写真が多く、それが椅子の印象として残っています。マッキントッシュの有名な椅子は背もたれに特徴がありますが、その写真の多くが正面から写したものがほとんどです。椅子というのは特別な存在の家具です。プロダクトデザイナーや建築家たちの多くは椅子を作りたいと考えています。何故なら、椅子は小さな存在ですが、デザイナーや建築家の思想を、高度な機能性と強度を必要とする最小スケールのプロダクトの中で表現することができるからだと思います。椅子は家具という範疇を越えて、思想を表現するひとつの媒体となっているともいえます。

私たちがこのValleという名のハイスツールをデザインする時に最も強くイメージしたことは、使用される場所の風景です。もちろん椅子としての機能を満たさなければなりませんが、ハイスツールが使われる場所でその椅子が存在するべきかどうかを思考します。ハイスツールの座面と背もたれは高い位置にあるため、空間の印象に大きく影響を与えます。また、椅子が使われている時、その椅子の姿は上部の後ろしか見えません。ハイスツールの後ろ姿は、椅子そのものと空間のイメージを決める大きな要素となってきます。

ハイスツールは強度と耐久性が求められるため、柔らかでエレガントなデザインのものが多くはありません。そこで私たちは、柔らかな素材を使って、品位のあるエレガントな後ろ姿のモダンなイメージのハイスツールを設計しました。緩やかにカーブした背もたれと座り心地の良い座面を繋ぎ一体として、脚と背中のラインが繋がり、長い脚が床に向かって収束していく自然な形状を作りました。座面と背もたれはファブリックで包み、それらを繋ぐマチが緊張感を持たせています。また、脚には四方に貫を配置し、ぐらつきが起こらないように安定感を重視して貫の太さと位置を決めました。足置きとなる前貫の位置も座った時に丁度良い高さになるように配置しました。Valle はバーカウンターでの美しい後ろ姿をイメージして製作されています。

品番: I-221
サイズ: W390×D446×H980×SH730
背・座:
ファブリック張り(F) / レザー張り(L)
脚: