The vertical lattice chair

I-282

いろいろな良い椅子の定義がある中で、今回の椅子に求めた答えのひとつは軽量であることです。女性が家の中のどこへでも移動できたり、片手で簡単に持ち上げて他の部屋や2階にも容易に運ぶことができるような軽い椅子です。そしてもうひとつは、静寂と簡素であることに価値を見出す日本人にとって、静かな佇まいで清楚に存在する椅子であることです。人の手によって、細部に渡り丁寧に作られているからこそ宿る、品格ある佇まいを大切にしたいと思いました。

日本人の精神性を感じるような静かな余韻を生み出すために、全体のフレームを極限まで細くする構成を試みました。同時に強度を確保するため、日本の古典建築やヨーロッパの伝統的なウィンザーチェアの強度の生み出し方などを構造に取り入れています。同じ1脚の椅子の中でも力が掛かる部分や力の加わる方向によって仕口(接合方法)を変えました。 部材を粗く削り出した後は、熟練した職人が南京鉋(なんきんがんな)という特殊な鉋を使って、後脚と背柱、前脚などを手で削りながら仕上げていきます。どの職人にもできる技術ではなく、1人の専門の職人が、木材1本1本の特性を見抜きながら削ります。複数の部材がひとつの繋がりを持って完結するように、接合部を滑らかに手で仕上げていくことで、品格ある椅子として完成します。南京鉋による手づくりでありながら、プロダクトとして安定した品質と形状を保ち、継続的に製作することが求められるとても高度な仕事です。

一般的な椅子の座裏に取り付けられる隅木は使わずに、本体の座枠を脚と一体に繋いで組む仕口を採用して強度を高め、4本の脚を繋ぐ貫の棒を脚に直接突き刺す古典様式に倣って、細い脚にバランス良く力を分散させるように貫を配置しました。また、特に配慮した部分は、椅子の裏側も滑らかな一体感をもって仕上げることでした。表から見える部分だけを整えるのではなく、普段目にすることが少ない座裏も美しく仕上げることで、製品全体がひとつにまとまり、上質な佇まいとなることを目指しました。
素材のウォールナット材は、木部の色を深みのある表情にする効果と美しい経年変化を楽しむために、北海道産の完全無添加のひまわり油と上質な国産蜜蝋を混合した当社開発のビーズワックスで仕上げています。

世界中に椅子や家具の長い歴史が存在する中で、日本で椅子や家具を作ることの意味や私たちにできることは何かを自らに問うことは重要なテーマだと考えています。これまでに作られてきた世界中の多くの椅子を前にして、日本だからこそ生み出せる感性や日本の美に対する視点、独特の精神性とそれに基づく技術、日本が中国や韓国などのアジア圏から影響を受けてきた文化的背景など、私たち日本人が椅子を作ることで、日本を背景とした匂いを放つことになれば、それは世界共通の椅子という大きなテーマに対してひとつの新しい提案になります。静けさの中に漂う緊張感、そして新鮮さと静寂が共存するものが作れたら良いと思います。

I-281

 

品番:  I-281 / I-282
サイズ: W450×D514×H780×SH450 / W500×D514×H780×SH450×AH630
フレーム:
座:ファブリック張り(F) / レザー張り(L)