Libra

 

I-025

1997年に自社開発の椅子として初めて製作したのがLibraです。

広島県福山市と府中市は家具産地として、長年に渡り全国に婚礼家具を供給してきた地域です。1995年頃、広島県の備後地域地場産業振興センターからの依頼を受け、新しい時代に向けた商品開発の方向性とそのデザインを考え、福山市や府中市の家具工場数社共同で製品を作る機会がありました。当時の私たちは、外部の若手日本人デザイナーと共同で様々な家具の開発をしていましたが、オリジナルプロダクトといっても外部のデザイナーによるデザインでした。ところが、その家具工場数社の中で唯一の椅子の製造工場と取り組みを行うこととなり、初めて自社でデザインから手がける椅子を製作することになったのです。約2年間の歳月を経て、1999年に製品として完成して以来、約17年もの間、ほとんど仕様変更することもなく今日まで生産を続けている唯一の椅子がLibraです。

この椅子は様々なプロセスを経て製品化に至りました。簡単な図面を描き、工場に図面をファックスで送り、数ヶ月後に試作品が届きました。その届いた椅子は想像していたものとは全くイメージが異なり、とても販売できるようなデザインにはなっていませんでした。すぐに工場の専務(現在の社長)に電話をし、翌日広島の工場へ向かいました。その時専務に言われた言葉が、その後の私たちのものづくりの考え方を大きく形づくるものになりました。週末だったこともあり、専務は「工場を自由に使って良いので、自分で手を動かして自分の作りたい椅子を作りなさい」と言われました。それまで自分の手で家具を作るとは考えたこともなく、戸惑いましたが、しばらくしてから90×180センチの合板に、椅子の1本の後脚と背柱を鉛筆と金定規で描き、背板と前脚も描きました。そ

して、専務の手を借り、鉛筆の線に沿って合板を切り出し、その切り出した板を型にして、無垢材を使ってパーツを削り出してゆきました。そのほとんどの工程を専務が手伝ってくれたのですが、自分の手で何も作ったことがない人間が椅子を作ることの難しさと木の持つ可能性、そしてものづくりの楽しさを知った瞬間でした。そこからが、私たちの本当のものづくりへの道が始まったのだと思います。

この20年近い歳月の間に、何度もモデルチェンジやマイナーチェンジをしようと試みましたが、専務とのこの貴重な時間があったことが、時代は変わっても現在もほとんど同じ仕様で製作を続けている所以なのかもしれません。また、当社の椅子のほとんどには特徴的な木の座枠を付けていますが、この椅子だけは座枠を見せず、座面全体を張地で覆った意匠にしています。それは20年近く前の仕様そのままです。また、背板に関しても、当社の椅子のほとんどは無垢板を使用していますが、この椅子は成形合板を採用しています。これも発表当時からの形と素材をそのまま継承しているからです。

時代と流行は周るといわれています。20年近く前に作った椅子が今、また新鮮な空気を帯びてきています。その時代にしかできないものが持つ強さを、この椅子は物語っています。

I-025
I-025
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I-026
品番: I-025 / I-026
サイズ: W454×D516×H810×SH440 / W534×D516×H810×SH440×AH585
フレーム:
座:ファブリック張り(F) / レザー張り(L)