北川 大輔

 

北川 大輔
デザイナー / クリエイティブディレクター
Product : trifle

 

 

 

 

 

「手を掛けて、手の痕跡を消す」

北川氏がこれまで手掛けてきたプロダクトにはこの言葉が集約されていると思う。手の中に納まる電化製品から空間を形づくる家具に至るまで、どのプロダクトにも共通するのは、極限まで研ぎ澄まされたデザインと凛とした佇まいである。その姿は一見、人の介在を感じさせない工業的な空気をまとっている。入念なリサーチによって組み立てられた仮説をもとに、そのプロダクトに適した素材や構造を検証し、クライアントの要望を汲み取った上で、新しいアプローチで打ち返す。しかし、それぞれのプロダクトの成り立ちや製造プロセスを紐解くと、北川氏のデザインへの情熱とそれに呼応した作り手の技術と創意工夫という多くの人の手が交錯していることがよく分かる。

北川氏とタイムアンドスタイルが共に製作したtrifleも同様だ。当初、北川氏のセルフプロジェクトとして始まったこのプロダクトは、「ごみ箱」というある程度の深さと底があるバスケット状のもので成立するものにどれだけデザインの余地があるか、という自身に課したテーマへの挑戦だった。製品化にあたり、スチールプレートを筒状に丸めた接合部の溶接点を消すためだけに絞り加工という工程を加え、滑らかなに仕上げた。溶接、絞り加工、仕上げの塗装はそれぞれ異なる工場が担い、多くの人の手を横断しながらも、まるで一体のパーツで成型されたように、さらりと存在している。北川氏はこのプロダクトに、“何でもない”という意味を持つtrifleと名付けた。生活の中で必要だけれど決して主役にはならない「ごみ箱」から始まったプロダクトは、サイドテーブルやマガジンラックとしても機能し、人と共存している。

作り手への敬意と誠意。
真・善・美を基本とした謙虚な姿勢。

これは北川氏がデザインや仕事をする上で大切にしていることだ。ミニマルなプロダクトとは対照的に、とても人間味のある考えを持って人と対峙している。人が使う道具としての機能性や実用性の中に、人に心地よく響く触感がある。それを主張することなく空間に佇む。それが北川氏のプロダクトである。

金沢美術工芸大学を卒業後、NEC デザインを経て、2015 年に株式会社DESIGN FOR INDUSTRY を設立。関わる全ての人とともに分かち合える“喜び” を創り出すことを信条に、家具や日用品から家電、ロボット、先端技術研究開発、新素材開発、都市ブランディングなど国内外問わず多彩な領域にて、“心地よい革新” という視点からデザイン・ディレクションを行う。GOOD DESIGN AWARD、GERMAN DESIGN AWARD winner、iF DESIGN AWARD など受賞多数。

金沢美術工藝大学 非常勤講師 / 東北芸術工科大学 特別講師