山のない国の人々のための山のあるテーブル


私たちの新しい店舗がオランダにオープンしました。新しい地へのメッセージを込めたこのテーブルのコンセプトは、オランダが平地(低地)であり、山がない国であることに由来します。学生の頃、日本に帰ることもなくヨーロッパでの暮らしの中で、日本を思い出す時に気付いたことがありました。それは、オランダや北部ドイツには、日本のように風景の中に山が見えないということでした。

日本では大都市の東京や大阪の一部を除けば、日本の地方都市や田舎の風景の中では、ほぼどこからでも山並みを望むことができます。例えば、北海道/旭川では大雪山系の山並み、東北では朝日連峰、神戸であれば六甲山系のように、どこの地方においても山を見つけることができます。そして誰しも自分の生まれ育った場所にそんな山があると思います。故郷に帰り、周囲の山並みが何十年(山の歴史から考えれば実際は何百年、何千年)経っても変わらないその景色を見て、懐かしい感慨を覚えるに違いありません。日本の山並みは、富士山は別として日本人の原風景と呼んでも良い風景なのではないでしょうか。

さらに、古くから日本文化には庭園や室内に様々な形で自然を取り込み、それを愛でる遊びがあります。庭園では自然石による石組や草木を風景や宇宙に見立てて表現し、和室には障壁画に自然を描き、床の間に掛け軸や花、盆栽、水石を添える。それらの自然を取り込む設えは、ハレの日の客人へのもてなしの心の表れでもあります。そして今回、水石の替わりに、現代の生活空間のテーブルの上に、山を作ってみたいと考えました。

こうして、キャビネットやテーブルに山並みが張り付いているアイデアが生まれ、1作目としてテーブルを製作しました。製作にあたり、具体的な山はあえて避けました。特定の地方や特定の山を作ることは、記憶や思い出を限定した人のみに与えることになるため、日本のどこにでもあるような標高1000~2000メートル級くらいの山脈を想定しています。切り立った頂を持つスイスやカナダ、北欧の山とは大きく異なり、稜線の高低差が少ない穏やかな日本の山を表現しました。

品番: T-521
サイズ: W2600×D1000×H880×TH720
天板:
脚:ブロンズ